【ポリヴェーガルの実践③】(コンタクトのワーク)

2024.11.19

さて、今回はボディーワーク3つ目のステップである「コンタクト」についてお話します。

まず繰り返しになりますが、sonomamaのボディワークには次の3つの流れがあります。

① 呼吸(感情)のワーク

② 筋肉(動き)のワーク

③ 表情・声(コンタクト)のワーク

◆ なぜ「コンタクト」が必要なのか

呼吸が深まり、筋肉の緊張が正常に戻ってくると、

感情は自然に動きと音(声)として解放されていきます。

ここまで来ると理屈の上ではほとんど健康です。

「今ある苦痛を取り除きたい」という目的だけであればセラピーを終えても良い段階です。

ですが、実際にはほとんどのケースでここからが本番になります。

なぜかというと、

ここまでで満たされているのはあくまで“自分一人の世界”の中だけだからです。

現実の社会は人と人との関わりによって成り立っています。

「人間」という言葉が“人と人との間”と書かれるように、

人は他者との関係の中で初めて「自分」を生きることができます。

つまり、社会のなかで幸福に生きるには

「相手と安心して関わる力=コンタクト」が必要になってくるのです。

◆ コンタクトにおいて重要な3つの器官

他人と関わっていくときに大きな役割を果たすのが、

表情・目・声の3つです。

まず表情。

安心しているかどうかは、言葉よりも先に顔にあらわれます。

心が緊張している状態では、どれだけ笑おうとしても無意識に顔が引きつってしまいます。

つまり、“笑おうと努力する”という時点で身体はすでに防衛をしています。

次に目。

目は「今、自分がどこに意識を向けているのか」をそのまま伝える器官です。

相手を見ているようで実は見ていなかったり、逆に見つめられただけで怖くなって逸らしてしまう。

こうした反応には、「他者に関わることへの不安」がそのまま表れています。

逆に、相手の目を自然に見ることができる時、人はすでに安心して関わろうとしています。

そして声。

声には感情がそのまま乗ります。

人は「何を言ったか」よりも「どんな声で言ったか」を敏感に感じ取ります。

緊張している時には声が小さくなり、恐れや怒りがある時は声が硬くなります。

逆に安心していれば、自然に声に温かさや柔らかさが出てきます。

このように

表情・目・声が自然に機能している時、私たちは他人との関係のなかで“安心して自分を表現できている”**と言えます。

これが、sonomamaでいう「コンタクトの回復」です。

◆ エンプティチェア(座布団ワーク)で“関わる身体”を思い出す

とはいえ、表情も目も声も「意識」ではコントロールできません。

だからこの段階では、座布団を使ったイメージワークを併用します。

空の座布団に相手を見立てて、実際に声を出して関わってみる

いわゆる「エンプティチェア」というゲシュタルト療法の技法です。

最初は「座布団に喋るなんて無理」「恥ずかしい」と思考が邪魔をします。

ですがしっかり呼吸と動きが整った状態でやると、

身体は驚くほどリアルに感情を感じ始めます。

必要であれば、私が相手役になり、怒られ役、慰め役、親役、子ども役を行います。

あらゆる役を演じます。(実は結構得意なんです)

ワークは深刻になる必要はありません。

むしろ、一緒に身体を使って遊んでみたり、

相手を傷つけないギリギリのラインを試してみるような「実験」に近い感覚です。

その中で、

  • 安心している時の表情や声
  • 関わろうとするときに出てくる不安
  • 嫌な時に自然に距離を取る感覚

などを身体全体で思い出していきます。

◆ 呼吸と動きが“土台”になる

ここまでやってきた呼吸や動きのワークは、

このコンタクトの段階で初めて本当の意味で活きてきます。

逆に言えば、呼吸や動きが中途半端なままコンタクトに入ると、

「安全な自分を演じる練習」で終わってしまいます。

だから最初の頃に

「毎日呼吸や動きをやってくださいね〜!」としつこくお願いしているのです。

何十年の習慣は数回のワークだけでは変わりません。

◆ 腹側迷走神経を育てるプロセス

このコンタクトのワークは、

ポリヴェーガル理論でいう腹側迷走神経(社会神経)を育てていくプロセスです。

他人に対して安心して自分を表現したり、

支えを感じたりしながら、「関わっても大丈夫」という身体的記憶を取り戻していきます。

これを体験することができれば、ある意味“完全回復”と言えるかもしれません。

ただし、最後に大切なことがあります。

◆ 本当に大切なのは“全部使えること”

腹側モード(安心して関わる力)だけを目指すのではなく、

  • 怒ったり逃げたりできる交感神経
  • 必要な時に自分だけの世界へ引きこもれる背側モード

この2つが先にきちんと回復していることが本当に大切です。

現代は「安全・安心」が強く求められる社会ですが、

怒っちゃダメ、泣いちゃダメ、自分の世界に閉じこもっちゃダメ、と言われ続けてきた人ほど

“安全な自分”を演じる方向に行ってしまい、結果的にまた感情を抑えこんで動けなくなります。

本当の安全とは、

自然に怒れたり、泣けたり、引きこもったりしながら

「いろんな人がいるけど、まあ案外面白い社会だな」と感じられること

です。

そんな世界を体験した時、人はよく

「なんか懐かしい感覚ですね」

と言います。

それこそが、“本来の自分の神経システム”なのだと思います。

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