さて、今回はボディーワーク3つ目のステップである「コンタクト」についてお話します。
まず繰り返しになりますが、sonomamaのボディワークには次の3つの流れがあります。
① 呼吸(感情)のワーク
② 筋肉(動き)のワーク
③ 表情・声(コンタクト)のワーク
◆ なぜ「コンタクト」が必要なのか
呼吸が深まり、筋肉の緊張が正常に戻ってくると、
感情は自然に動きと音(声)として解放されていきます。
ここまで来ると理屈の上ではほとんど健康です。
「今ある苦痛を取り除きたい」という目的だけであればセラピーを終えても良い段階です。
ですが、実際にはほとんどのケースでここからが本番になります。
なぜかというと、
ここまでで満たされているのはあくまで“自分一人の世界”の中だけだからです。
現実の社会は人と人との関わりによって成り立っています。
「人間」という言葉が“人と人との間”と書かれるように、
人は他者との関係の中で初めて「自分」を生きることができます。
つまり、社会のなかで幸福に生きるには
「相手と安心して関わる力=コンタクト」が必要になってくるのです。
◆ コンタクトにおいて重要な3つの器官
他人と関わっていくときに大きな役割を果たすのが、
表情・目・声の3つです。
まず表情。
安心しているかどうかは、言葉よりも先に顔にあらわれます。
心が緊張している状態では、どれだけ笑おうとしても無意識に顔が引きつってしまいます。
つまり、“笑おうと努力する”という時点で身体はすでに防衛をしています。
次に目。
目は「今、自分がどこに意識を向けているのか」をそのまま伝える器官です。
相手を見ているようで実は見ていなかったり、逆に見つめられただけで怖くなって逸らしてしまう。
こうした反応には、「他者に関わることへの不安」がそのまま表れています。
逆に、相手の目を自然に見ることができる時、人はすでに安心して関わろうとしています。
そして声。
声には感情がそのまま乗ります。
人は「何を言ったか」よりも「どんな声で言ったか」を敏感に感じ取ります。
緊張している時には声が小さくなり、恐れや怒りがある時は声が硬くなります。
逆に安心していれば、自然に声に温かさや柔らかさが出てきます。
このように
表情・目・声が自然に機能している時、私たちは他人との関係のなかで“安心して自分を表現できている”**と言えます。
これが、sonomamaでいう「コンタクトの回復」です。
◆ エンプティチェア(座布団ワーク)で“関わる身体”を思い出す
とはいえ、表情も目も声も「意識」ではコントロールできません。
だからこの段階では、座布団を使ったイメージワークを併用します。
空の座布団に相手を見立てて、実際に声を出して関わってみる
いわゆる「エンプティチェア」というゲシュタルト療法の技法です。
最初は「座布団に喋るなんて無理」「恥ずかしい」と思考が邪魔をします。
ですがしっかり呼吸と動きが整った状態でやると、
身体は驚くほどリアルに感情を感じ始めます。
必要であれば、私が相手役になり、怒られ役、慰め役、親役、子ども役を行います。
あらゆる役を演じます。(実は結構得意なんです)
ワークは深刻になる必要はありません。
むしろ、一緒に身体を使って遊んでみたり、
相手を傷つけないギリギリのラインを試してみるような「実験」に近い感覚です。
その中で、
- 安心している時の表情や声
- 関わろうとするときに出てくる不安
- 嫌な時に自然に距離を取る感覚
などを身体全体で思い出していきます。
◆ 呼吸と動きが“土台”になる
ここまでやってきた呼吸や動きのワークは、
このコンタクトの段階で初めて本当の意味で活きてきます。
逆に言えば、呼吸や動きが中途半端なままコンタクトに入ると、
「安全な自分を演じる練習」で終わってしまいます。
だから最初の頃に
「毎日呼吸や動きをやってくださいね〜!」としつこくお願いしているのです。
何十年の習慣は数回のワークだけでは変わりません。
◆ 腹側迷走神経を育てるプロセス
このコンタクトのワークは、
ポリヴェーガル理論でいう腹側迷走神経(社会神経)を育てていくプロセスです。
他人に対して安心して自分を表現したり、
支えを感じたりしながら、「関わっても大丈夫」という身体的記憶を取り戻していきます。
これを体験することができれば、ある意味“完全回復”と言えるかもしれません。
ただし、最後に大切なことがあります。
◆ 本当に大切なのは“全部使えること”
腹側モード(安心して関わる力)だけを目指すのではなく、
- 怒ったり逃げたりできる交感神経
- 必要な時に自分だけの世界へ引きこもれる背側モード
この2つが先にきちんと回復していることが本当に大切です。
現代は「安全・安心」が強く求められる社会ですが、
怒っちゃダメ、泣いちゃダメ、自分の世界に閉じこもっちゃダメ、と言われ続けてきた人ほど
“安全な自分”を演じる方向に行ってしまい、結果的にまた感情を抑えこんで動けなくなります。
本当の安全とは、
自然に怒れたり、泣けたり、引きこもったりしながら
「いろんな人がいるけど、まあ案外面白い社会だな」と感じられること
です。
そんな世界を体験した時、人はよく
「なんか懐かしい感覚ですね」
と言います。
それこそが、“本来の自分の神経システム”なのだと思います。

