
「最近すごく楽です。仕事復帰もした、予定もびっしり、人ともよく会えるようになった。めちゃくちゃ元気になりました! 」
数か月もすると、大抵の方は言われます。これはとても大切なプロセスです。
しかし、欲を言えば、本番はここからなのです。
例えば、笑顔で明るい表情をしていても、呼吸は浅く早く、上半身は緊張気味。
このように「もう大丈夫だ」と感じながらも、実は深い感情には触れていないことが多くあります。
ちなみに私も、「大丈夫です!気づきました、、」と言っていた数か月後に同じような悩みを感じ、
またワークで一から、、などと言う事は普通に起こります。
ですから、いい悪いの話ではなく、人はそういう風に出来ていると理解しておくといい。と言う話です。
■ 一過性の「楽」と、深い「統合」
楽とは、休んだり気分転換したりして感じるリラックス。呼吸が深くなったり、肩の力が抜けたりする一時的な解放感です。
統合とは、避けてきた怒りや悲しみを感じきり、自分の一部として受け入れること。体の奥から「安心」が広がり、生き方そのものが変わっていくプロセスです。
「楽」は必要な休息ですが一過性。
「統合」は持続的で、自己回復の力を伴います。
この違いを理解しておくと話がスッと入ると思います。
言い換えれば、”一時的な安楽さ”と”気楽な生き方”とも言えます。
これらは似て非なるものなのです。
■ 心理的な回避と行動
見分け方(気づき)は簡単です。
緊張から解放されたとき、人はしばしば行動に走ります。
アクティングアウト(行動化)と言われます。
元気になった時
・買い物が増える
・予定を詰め込む
・新しい人間関係に飛び込む
・過去に担ってきた役割へ戻る
そのとき感じる「高揚感」や「達成感」は、一見すると安定を取り戻したように見えます。
「自分には居場所がある」「人から必要とされている」と錯覚しやすいからです。
しかし実際には、それは深い感情を避けるための回避にすぎないことが多いのです。
そのままセラピーを進めていくと、やがてその奥に隠れていた怒りや悲しみに触れ、
また新しいプロセスへと進んでいく瞬間が訪れます。
ここは一つのターニングポイントです。
■ 躁的な高揚感と「大地性」
このプロセスで出てくる躁的な高揚感は、本当に「元気になった」ように見えます。
しかし、その実態は、どこか浮足立った状態なのです。
実際、思考が過活動し、おしゃべりになるので、地面から少し浮いているような感覚です。
一時的な軽やかさはあっても、安定感や持続性に欠けているのです。
特に悩み苦しんでいる状態で来られた方は、セラピー(ワーク)が進んでくると、エネルギーが戻り活力がわきあがります。
この状態に一喜一憂してしまうと、統合の機会を失い、数カ月もすれば元の症状が顔を覗かせ始めます。
バイオエナジェティクスの創始者アレクサンダー・ローエンは、こうした状態を「地に足がついていない(ungrounded)」と表現します。
そして、
「地に足がついていないことは、精神的な病理の兆候である。」
と述べています。
足は人を大地につなぎ、現実につなぐものなのです。頭に偏ったエネルギーは現実感を失わせ、感情や欲求とのつながりを弱めてしまいます。
だからこそローエンは、グラウンディング(足裏で床を感じ、下半身を解放すること)を、心の健康の根幹に据えました。
これに呼応するように、鈴木大拙も「大地性」という言葉を使い、根を下ろして大地に支えられて生きる大切さを語っています。
■ 「自由とは何か」 鈴木大拙
禅を世界に広めた仏教学者 鈴木大拙は
「ZEN」という言葉を西洋に紹介した第一人者として知られています。
彼は
「自由とは、フリーダムやリバティとは違う」と述べました。
フリーダムは「束縛からの解放」、リバティは「権利としての自由」。
けれど大拙の言う自由はもっと根源的で、
「自らに在り、自ら由る、自ら考え、自ら行為し、自ら作ること」
松は松、竹は竹としてそのままに立つように、自分の「ありのまま」に住すること。
それが東洋的な自由だと説いています。
魚は飛ぶことに憧れたりしません。ただ魚で在ることを受け入れ、全力で生きている。それが自由、という事です。
これはまさに「統合」と同じ響きを持っています。
外に向かって動き回る“浮足立った自由”ではなく、大地に根ざして「私自身であること」を許すことが自由なのです。
■ 本当の「大丈夫」
日本人の「大丈夫」はしばしば”我慢できる”という事も含め、二重の意味を持っています。
具体的に何が起きているのでしょうか。
・行動としての大丈夫
不安を感じないように動き続ける。躁的な高揚感や役割の安定感に支えられた一時的な安心。呼吸が早く浅く、浮足立つ。思考的。
・統合としての大丈夫
感情を感じきり、自分に回収したあとに訪れる静けさ。何もしていなくても、呼吸が深まり「ここにいていい」と思える安定感。適度な緊張。
同じ大丈夫、でもその心の内側で起きている事は全く違うのです。
日常でできる一歩
もし「最近、楽になった」と思ったら、少し立ち止まってみてください。
呼吸は深くなっているか?
胸やお腹の奥にまだ震えや涙はないか?
何もせず何も考えずに静かに座っていても安心できるか?
それを確認することで、行動のスッキリ感と、統合の安心感を見分けやすくなります。
■ 終わりに
セラピーは、緊張から解放されるだけでなく、その奥にある感情を統合し、体と心を丸ごと受け入れていくプロセスです。
その先に、スッキリ感を超えた、本当の「自由」が待っています。
salon sonomamaでは、身体心理療法・ゲシュタルト療法をベースに、安心の場で身体や感情を扱うセッションを行っています。
もし今「もう大丈夫」と思いながらもどこか落ち着かない方は、解放から統合への道を。
完全予約制で、対面以外にもオンラインにも対応しております。
お気軽にご相談くださいませ。






