
未来を描いても変わらない人がいます。
コーチングや自己啓発のセミナーを、たくさん受けてきた人がいます。
未来を描く。
理想の自分を明確にする。
前向きな言葉を使う。
行動を変える。
思考を整える。
そうしたことを、一生懸命やってきた。
けれど、それでもどこかで苦しさが抜けない。
現実は変わらない。
一瞬上がることはあっても、また元に戻ってしまう。
そういう人がいます。
実際に今回も、コーチングによって未来を描いてみました。
その時間そのものは、決して無意味ではありません。
未来を見ること、可能性を見ることには意味があります。
けれど、その後に私は、こういう話をしました。
人間は、陰と陽で成り立っている。
明るさだけでは成り立ちません。
前向きさだけでも成り立ちません。
元気さ、理想、成長、行動、希望。
そうした“陽”の側面だけで人間ができているわけではないのです。
不安。
寂しさ。
怒り。
恐れ。
虚しさ。
迷い。
動けなさ。
傷つき。
そうした“陰”の部分もまた、その人の一部です。
にもかかわらず、世の中には
「明るい方がいい」
「前向きな方がいい」
「未来を見た方がいい」
「ネガティブを手放した方がいい」
という空気が強くあります。
でも、それをやりすぎると何が起こるのか。
晴れの部分にだけ光を当てて、雨を否定することになるのです。
雨が悪いのではありません。
曇りが失敗なのでもありません。
陰が未熟なのでもありません。
それを否定し続けると、自分の内側にある葛藤はむしろ強まります。
あるいは、自分のしんどさや痛みから切り離されていく。
つまり、解離が強まっていきます。
一見すると前向きです。
一見すると成長しています。
一見すると意識が高く見えるかもしれません。
けれど実際には、自分の一部を置き去りにしたまま、明るい側だけで生きようとしていることがあるのです。
それでは、どこまで行っても満たされません。
なぜなら、自分の全体を使って生きていないからです。
◾️なぜコーチングだけでは届かないことがあるのか
コーチングは、未来を見る力があります。
目標を明確にし、行動を促し、前に進むサポートをする。
その力は確かにあります。
ただ、それが機能しにくい人もいます。
それは、前に進めない理由が「行動不足」ではなく、
もっと深いところにある場合です。
たとえば、
・本当は怖い
・傷ついている
・怒りが抑え込まれている
・悲しみが凍っている
・身体がずっと緊張している
・人との関係の中で古いパターンが繰り返されている
こうしたものが土台にあるとき、
上から「未来を描こう」と働きかけても、変化は表面的になりやすいのです。
頭ではわかる。
理想も見える。
やるべきこともわかる。
でも、なぜか進まない。
それは意志が弱いからではありません。
その人の内側に、まだ触れられていない部分があるからです。
◾️必要なのは、ボトムアップのアプローチ
だからこそ必要になるのが、
陰の部分を見ていくことです。
しんどさを見ていく。
感じたくなかった感情に触れていく。
身体に止まっている反応に気づいていく。
関係の中で繰り返されるパターンを見ていく。
これは、単に暗い話をするということではありません。
むしろ逆です。
見ないようにしていたものを見ていくことで、
はじめて人は、自分の全体を取り戻していきます。
上から理想をかぶせるのではなく、
下から土台を整えていく。
これが、ボトムアップのアプローチです。
頭で自分を変えようとするのではなく、
身体や感情や無意識の反応も含めて、
その人の全体を扱っていく。
そうして初めて、
未来は「描くもの」から「生きられるもの」に変わっていきます。
◾️コーチング迷子になっている人へ
今回この話をした方は、とても納得されていました。
そして、
「これは、世の中のコーチング迷子の人にぜひ伝えた方がいい」
とまで言ってくださいました。
私はその言葉に、とても本質が含まれていると感じました。
未来を描くことが悪いのではありません。
明るさや希望が悪いのでもありません。
問題なのは、
それだけで人間を扱おうとすることです。
人は、そんなに単純ではありません。
陰があるから、陽が生きます。
雨があるから、晴れも意味を持ちます。
しんどさを無かったことにして、本当の意味で軽くなることはありません。
だからこそ、変わらなかった人に必要なのは、
さらに強い前向きさではなく、
自分の中に置き去りにしてきた部分に、丁寧に出会い直すことなのだと思います。
◾️最後に
「未来を見ているのに、なぜか変わらない」
「たくさん学んできたのに、満たされない」
「前向きにやってきたはずなのに、どこか苦しい」
そう感じるなら、
それはあなたがダメなのではありません。
もしかすると、これまでのアプローチが、
あなたの“陽”にばかり光を当て、
“陰”を置き去りにしてきただけかもしれません。
人間は、陰と陽で成り立っています。
どちらか片方だけではなく、
その両方を含んだ全体として自分を扱っていくこと。
そこから、本当の意味での変化は始まります。
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