
モーリッツィオ・スチューピージア(Maurizio Stupiggia)という方がいます。
彼はイタリア出身の心理療法家であり哲学者。
ミラノ大学医学部の客員教授として教鞭をとりながら、
身体心理療法の学派「バイオシステミックス」を国際的に広めてきました。
母子関係や自律神経と感情の関係を重視し、
長年にわたって臨床と教育の両面から“身体のつながり”を探究してきた方です。
■ 安心は言葉ではなく、身体の共鳴で伝わる

彼の研究のひとつに「マイクロトラッキング」という方法があります。
母子のやり取りをビデオでフレームごとに観察し、
呼吸、まなざし、表情、姿勢のほんのわずかな変化の中に、
つながりや安心がどのように伝わっているかを読み取っていくものです。
そこから彼は、
安心とは言葉ではなく、身体的な共鳴の中で伝わるものだと語ります。
■ 安全の伝達 神経系の共同調整

ワークショップで、こんな話をされていました。(記憶を辿っているので正確じゃないかもしません)
赤ちゃんが歩く進路の途中に、透明ガラスの床を置き、
下に崖のようなトリックアートを描く。
赤ちゃんは立ち止まり、少し迷います。
そのとき、母親が落ち着いた表情で「大丈夫」と見守ると、
赤ちゃんは安心して一歩を踏み出します。
けれど、母親の中にほんの少しでも不安や心配があると、
赤ちゃんは動けなくなるのです。
彼はそれを「安全の伝達」の象徴として話されていました。
安全とは認知ではなく、神経系の共調
ポリヴェーガル理論が示す共同調整(co-regulation)の働きです。
母親と赤ちゃん、セラピストとクライアント、
人と人との間には、言葉を超えた「身体の対話」が流れています。
■ トラウマとは「共にいてくれる誰か」がいなかった体験

トラウマとは、そのつながりの場を突然失う体験です。
出来事そのものよりも「共にいてくれる誰かがいなかった」ことが、
心と身体に深い影を落とします。
癒しとは理解や記憶の回復ではなく、
誰かと安全に“共にいる”体験を身体がもう一度思い出すことなのです。
セラピーや対話の中で、ただ静かに隣に座り、
一緒に呼吸をし、同じ空間のリズムを感じる。
その瞬間、神経系はわずかに安心を取り戻し、
「一人ではない」という身体の記憶が動き出します。
■ 共鳴が凍った生命を動かす

安全は頭でつくるものではなく、身体の間に自然に生まれるものです。
呼吸や姿勢、視線の中で交わされる“共鳴”が、
凍っていた生命の流れをもう一度動かしていきます。
「すべてのトラウマの中には、壊れた詩がある。
セラピーとは、二つの身体が呼吸を合わせながら、
その詩をゆっくり書き直していく行為である。」
私たちは「共にいる」ことで、再び詩を取り戻します。
それは、どんな言葉よりも深く、
身体が覚えている“つながり”の言葉なのです。
■ somomamaの想い
私自身のセラピーでも、
この「共にいる身体の安心」をとても大切にしています。
スキルや知識ではなく、どんな時も共に居る”存在”が人を真の安心へと導いていくからです。
それは優しさ、とは少し違います。
例え、衝突やすれ違いが起きても、それでも共に居る、いつもそこに戻れる関係であることが真の安心を育てていくのです。
安心は“伝える”ものではなく、“伝わる”もの。
その静かな伝わりの中にこそ、生命が再び動き出すのです。
sonomamaでは、皆様に体験を還元できるようグループワークを定期的に開催しています。
心の構造、身体性、関係対話、トラウマ理論など、希望に合わせてテーマは毎回変えています。
個人セラピーを受けられている方は、繋がりの体験へ。
初めての方は、個人を深めていくきっかけにもなるでしょう。
ご興味のある方は開催日をお伝えしますのでお声かけ下さい。
salon sonomamaでは、身体心理療法・ゲシュタルト療法をベースに、安心の場で身体や感情を扱うセッションを行っています。
完全予約制で、対面以外にもオンラインにも対応しております。
お気軽にご相談くださいませ。

