
呼吸の話。
私たちの呼吸は、単なる生理的な動きではなく、その瞬間の「性格状態」をありのままに映し出しています。
胸が厚く広がる人、肩に緊張を抱えている人、猫背でお腹の呼吸に偏る人、反り腰で胸を突き出す人。
それぞれの姿勢は、心のあり方や防衛のパターンと直結しています。
猫背の人は、胸の呼吸を閉ざしやすく、感情を抑え込みがちです。
反り腰の人は、腰の緊張によってお腹の呼吸を制限し、胸式の浅い呼吸に偏ります。そこには「頑張らなければ」「前に出なければ」という防衛的な昂揚感が潜んでいます。
このように呼吸と姿勢は「性格の表情」そのものです。
しかし呼吸だけを変えようとしても、その効果は限定的です。姿勢や筋肉の緊張は、深い感情や防衛の仕組みに支えられているからです。
セラピーで大切にするのは、呼吸の形を整えることではなく、呼吸と呼吸の間に生まれる微細な感覚に気づくことです。
そこに意識が向くと、無理に変えなくても呼吸は自然に変化していきます。
そして、その変化は性格状態や生き方そのものに柔らかさをもたらし、新しい振る舞いへとつながっていきます。
呼吸は「今の自分」を教えてくれるもっとも身近な道しるべ。
その声に耳を澄ませることが、変化の第一歩なのです。

