
―身体から恐怖を理解する―
ゲシュタルト療法の創始者、フリッツ・パールズはこう言いました。
「恐怖とは、呼吸の伴わない興奮である」
この言葉は、とてもシンプルですが、身体心理の視点から見ると、非常に深い意味を持っています。
一般的に、恐怖というと
「考え方の問題」
「トラウマの記憶」
「性格の問題」
として語られることが多いでしょう。
しかし身体の視点から見ると、恐怖とはもっと具体的で、もっと生理的な現象です。
それは
本来なら動きや呼吸とともに流れるはずのエネルギーが、身体の中で止まってしまった状態
なのです。
「人が怖い」「返信ができない」という恐怖
例えば、こんな相談を受けることがあります。
・人と会うのが怖い
・会話になると頭が真っ白になる
・メールの返信ができない
・LINEを開くのが怖い
こうした悩みを抱えている人は少なくありません。
そして多くの場合、その人はこう言います。
「どう返事したらいいかわからないんです」
「変なことを言ったらどうしようって考えてしまって」
「嫌われたらどうしようと思ってしまう」
つまり、恐怖の中心には
「どうすればいいか」を考え続ける思考
があります。
・いつ返信するべきか
・どういう文章が正解か
・相手はどう思うか
・どう思われないようにするか
こうした思考がぐるぐると回り続けます。
しかし、ここで大切なのは、
恐怖の本質は思考ではない
ということです。
思考は結果であり、原因ではありません。
恐怖が起きている「身体の中」を見てみる
では実際に、その「返信できない場面」を身体の中で再現してみます。
セッションでは、こうしたことを行います。
「今、スマホを持っているつもりで、そのメールを見てみてください」
「その時、身体はどうなっていますか?」
すると多くの人が、こう答えます。
・胸が詰まる感じがする
・呼吸が浅くなる
・お腹が固まる
・足が動かなくなる
・肩に力が入る
つまり、恐怖とは
身体の中で起きている筋緊張と呼吸の停止
として現れているのです。
この状態を、もう少し丁寧に観察していきます。
「足はどんな感じですか?」
「呼吸は入っていますか?」
「肩の力はどれくらい入っていますか?」
すると、ある人はこう言いました。
「足が地面にくっついたみたいで、動けないです」
「息が止まってる感じがします」
これが、まさに
「呼吸の伴わない興奮」=恐怖
なのです。
恐怖とは「止まった動き」である
恐怖の状態では、本来なら起こるはずの行動が止まっています。
例えば
・言い返す
・逃げる
・近づく
・助けを求める
こうした動きが、身体の中で止まってしまっているのです。
そして、その止まったエネルギーが
・筋肉の緊張
・呼吸の停止
・胃の違和感
・胸の圧迫感
として感じられます。
つまり恐怖とは
止められた行動のエネルギーが、身体の中で固まっている状態
なのです。
動きと呼吸を取り戻すと、恐怖は変化する
では、この状態にどうアプローチするのでしょうか。
まずは、その場面の中で
止まっている動きを少しだけ動かしてみる
ということを行います。
例えば、足が止まっている人にはこう提案します。
「その場で、足を少し動かしてみましょう」
「ほんの少しでいいので、前に出してみてください」
あるいは
「ゆっくり息を吸って、吐いてみてください」
そうすると、不思議なことが起こります。
「なんか、少し楽になりました」
「さっきより怖さが減った気がします」
「頭がクリアになってきました」
これは
止まっていたエネルギーが、再び流れ始めた
からです。
恐怖は、固定された状態です。
動きが戻ると、状態も変化します。
そのまま感じていくと、原点に触れる
さらに、その感覚をそのまま感じていくと、
ある時、こんなことが起こります。
「なんか、この感じ…昔にもあった気がします」
「お母さんに怒られた時の感じに似てる」
「学校で先生に呼び出された時と同じ感じです」
つまり、現在の恐怖の身体感覚が、
過去の未完了の体験とつながる
のです。
そしてその場で
・言えなかった言葉
・出せなかった怒り
・感じられなかった悲しみ
を少しずつ表現していくと、
身体の緊張がほどけていきます。
これが
未完了の完了
というプロセスです。
恐怖をなくそうとしない
ここで大切なのは、
恐怖を消そうとしないこと
です。
多くの人は
「怖がらないようにしよう」
「考えすぎないようにしよう」
「ポジティブに考えよう」
とします。
しかし、恐怖は思考ではなく
身体の状態
です。
だからこそ大切なのは、
・今、呼吸はどうなっているか
・どこに力が入っているか
・どの動きが止まっているか
を感じることです。
恐怖へのシンプルな練習
もし、何かが怖くなった時は、次のことを試してみてください。
① 呼吸を感じる
息が止まっていないか確認する
② 身体の緊張に気づく
肩、胸、お腹、足など
③ 小さく動いてみる
足を動かす
肩を回す
深く息を吐く
これだけで、身体の状態は少し変わります。
そして身体が変わると、感情も思考も変わります。
恐怖は「流れが止まったサイン」
恐怖とは、何かがおかしいというサインではありません。
それは
エネルギーの流れが止まっているというサイン
です。
呼吸が止まり、動きが止まり、感情が止まる。
その結果として、恐怖という感覚が生まれます。
だからこそ大切なのは、
恐怖をなくすことではなく、
呼吸と動きを取り戻すこと
なのです。
そうすると、恐怖は自然に形を変えていきます。
そしてその奥にある
・怒り
・悲しみ
・寂しさ
・愛情
といった、本当の感情に触れていくことができます。
そこに触れた時、人は少しずつ自由になっていきます。salon sonomamaでは、身体心理療法・ゲシュタルト療法をベースに、安心の場で身体や感情を扱うセッションを行っています。
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