苦しみを避けるほど癒やされない構造

2025.11.26

■ 逃げるという防衛

人は、つらい出来事に直面したとき、
「感じないようにする」ことで自分を守ります。

呼吸を止め、身体を固め、笑ってごまかし、考えすぎたりして、感じる事を麻痺させるのです。
これらはすべて、生き延びるために作動する防衛反応です。
ごく自然な反応です。

しかし、その状態が長く続くと、心も身体も“凍ったまま”になってしまいます。
それは決して消える事はなく、身体や心の奥に封じ込められていきます。

そして、その苦しみが顔を覗かせるたびに、「感じないための努力」を強いられ続けるのです。

これが「苦しみを避けても癒やされない」構造です。

■ 痛みを感じないようにすることの代償

痛みを感じないように抑えた感情は、
心の奥に沈み、やがて身体の不調や慢性的なつらさに姿を変えます。

これが「抑圧」のしくみと実態です

フロイトは、痛みを感じないように抑え込むことで、
そのエネルギーが身体症状や慢性的な苦しみに転化すると考えました。

原初療法(プライマルセラピー)で

苦痛 (Pain) + 抑圧 (Repression) = 疾患 (Disease)と説明されます。

例えば

泣けなかった悲しみは胸の圧迫に、
怒れなかった怒りは首や肩の緊張に、
恐れを感じなかった不安は胃や腸の不調に。

身体は、感じきれなかった感情を「症状」という形で語り続けるのです。

■ 感じることによって癒える構造

プライマルセラピーでは、
苦痛を「感じきる」ことが、癒やしの入り口だと考えます。

苦痛 (Pain) + 感受 (Suffering) = 生存 (Survival)

ここでいう“Suffering”とは「我慢」ではなく、
安全な場の中で「感じる勇気」です。
涙、震え、怒り、呼吸の回復
身体が凍りついた記憶を溶かすとき、ようやく
「もう逃げなくてもいい」という感覚が生まれるのです。

■ ジョン・レノンが体現した“感じる勇気”

ジョン・レノンもまた、抑圧の苦しみを抱えた一人でした。
母親を幼い頃に失い、その痛みを音楽と皮肉の裏に隠して生きてきた彼は、
1970年にプライマルセラピーと出会いました。

セラピーの中でジョンは、母を呼びながら泣き叫び、
封じ込めてきた悲しみを全身で感じ直したといいます。
その体験の後に生まれたのが、アルバム『John Lennon / Plastic Ono Band』。

中でも「Mother」や「Love」は、
感情を取り戻した彼の“生き返りの声”そのものです。
感じることでしか、閉じ込められた痛みは解けない
そのことを、彼の歌声が今も静かに教えてくれます。

■ 結び

苦しみを避けることは、生き延びるために必要だった。
しかし、逃げ続けることは、生きる力を止めてしまう。

感じることは、治すことではなく、再び生きること
それが、癒やしの構造なのです。

LOVE – John Lennon
MOTHER – John Lennon

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