身体はコントロール出来ない

2026.02.01

「身体はコントロールされるものではない。関係を結び直すものだ。」  
— アレクサンダー・ローエン

最近、「感情をコントロールする」「身体を思い通りに扱う」という言葉を、あちこちで耳にします。  
けれど、そこにどうしても拭えない違和感があります。

そもそも、感情や身体は本当にコントロールできるのでしょうか。

◾️身体や感情は、そもそもコントロールできない

怒りを「感じるな」と命令して、消せるでしょうか。  
悲しみや恐怖を「出るな」と押さえつけて、本当になくなるでしょうか。

感情は、自律神経やホルモン、過去の記憶と結びついて、勝手に立ち上がってくる現象です。  
意志の力で、スイッチのようにON/OFFできるものではありません。

ここがまず、  
「コントロールできる」という前提そのものが成り立たない理由です。

できるのは「出す・抑える」の調整だけ

ただし、一つだけできることがあります。  
それは、出すか、抑えるかの「調整」です。

イメージとしては、  
感情そのものを消すスイッチではなく、  
ラジオのボリュームのつまみのようなもの。

今は少し上げる。  
今は少し下げる。  
完全に消さず、聞こえる程度にする。

この調整は可能です。

◾️調整には「上げる力」と「下げる力」が必要

ここで大事なのは、  
下げることだけが調整ではない、という点です。

ボリュームを下げるには、  
一度は上げられる力が必要です。

怒りを出せない人は、  
実は「抑える」のではなく、  
最初から上げる力を失っていることが多い。

悲しみを感じられない人も同じです。  
感じないのではなく、  
感じる回路が細くなっているだけ。

本当の調整とは、  
上げることも、下げることも、  
どちらも選べる状態を取り戻すことです。

◾️感情を軽視しすぎた現代社会

ところが現代は、  
感情を感じることよりも、  
排除することに力を注ぎすぎているように感じます。

怒るな。  
泣くな。  
怖がるな。  
感じる前に、整えろ。

こうしたメッセージの積み重ねは、  
身体や感情との関係を断ち切るための  
「コントロール」を強化していきます。

それは、  
人が人として生きるための感覚を手放し、  
社会的に都合のいい“機械”になろうとする動きにも見えます。

◾️「コントロール可能!」という幻想が生む苦しさ

そんな中で、  
「もっと鍛えればコントロールできる」  
「訓練すれば感情は支配できる」  
と言われ続けると、どうなるでしょうか。

できない自分を責める。  
感じてしまう自分を否定する。  
さらに力で抑え込もうとする。

結果、楽になるどころか、  
自分を苦しめる構造が強化されていきます。

これが、私が感じている違和感の正体です。

◾️必要なのは、コントロールではなく関係を結び直すこと

ローエンの言葉が示しているのは、  
身体を思い通りに扱うことではありません。

身体や感情と、  
もう一度、関係を結び直すこと。

排除するのでも、支配するのでもなく、  
聴くこと。  
応答すること。  
選び直せる余地を取り戻すこと。

身体は、敵ではありません。  
あなたを困らせる存在でもありません。

それは、これまであなたを守り、  
生き延びさせてきたパートナーです。

コントロールしようとするのをやめたとき、  
身体との本当の対話が、ようやく始まります。

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