私たちが「今ここ」にいられなくなる理由には、
心理的メカニズムがあります。
その理解に大いに役に立つのが、
クラウディオ・ナランホ という心理療法家です。
ゲシュタルト療法の第二世代であり、
さらに 現代エニアグラムの体系化を主導した人物でもあります。
エニアグラムの各タイプに共通する「無意識の逃避構造」を深く洞察したナランホは、人が本音や感情に触れようとする瞬間に働く
自我の“逃避=防衛”のパターン を
○○ism(イズム) という形で整理しました。
この視点を持つと、
「なぜ今ここにいられないのか?」が
単なる気の持ちようではなく、
心の自然な反応として理解できる ようになります。
ゲシュタルト療法は「今ここ」の気づきの療法
ゲシュタルト療法の中心にあるのは、
今ここで起きている体験に気づくこと”です。
▫️呼吸の深さ
▫️胸の動き
▫️身体のこわばり
▫️浮かびあがる感情
▫️言葉にならない衝動
こうした“生の体験”へとつながった瞬間こそ、
人は自然に変化と癒しを経験します。
しかし実際には、
体験が動きそうになるその直前で、
心がスッと横へ逃げてしまうことがあると思います。
これが、ナランホが整理した 逃避のイズム(防衛) です。
心がつくる“逃避のパターン(イズム)”とは?
イズムとは、
いま起きている体験(is ism)から離れるための心の習慣=防衛 のことです。
怒りが込み上げる前に、
悲しみが触れそうになる前に、
胸がうずく前に、
喉が震えそうになる前に
心は「感じたくないもの」から身を守ろうとして、
別のルートへ意識をそらします。
これが「今ここにいられない」という現象のメカニズムです。
代表的な“逃避のイズム”
ここからは、実際のセッションで最も多く現れる
7つの逃避パターン(イズム) を
もう少し深く・具体的に解説してみます。
About-ism(アバウトイズム)
説明・分析の世界に逃げる
「母との関係が〜で…」
「これはトラウマで、きっと〜」
「たぶん私はこういう性格だから」
「〜について語る(about it)」ことで、
いま湧いている体験から離れてしまうパターンです。
身体の反応
-
胸の動きが止まる
-
呼吸が浅い
-
感情が動いていない
セッションでの典型は
涙の手前で突然“説明モード”になる。
Should-ism(シュッドイズム)
「〜すべき」「〜ねば」に飲み込まれる
「もっと頑張らないと」
「怒ってはいけない」
「いい母でいなきゃ」
理想・道徳・正しさによって自己を縛りつけ、
本音に触れない防衛です。
身体の反応
-
胸が硬い
-
呼吸が上部に引きこもる
-
背すじが過緊張
よく起こる心理
怒りが外へ出ず、自己攻撃(反転)へ向かう事が最も多く見られます。
Nice-ism(ナイスイズム)
“いい人”を演じて怒りや本音を隠す
「全然大丈夫です」
「気にしてないです」
「相手には悪気はないので…」
優しさの仮面で、本音と接触しないパターンです。
身体の反応
-
肩・背中が硬い
-
胸は凍結
-
声が軽く響かない
典型的な場面としては
怒りに触れそうになると笑ってごまかすことが多くなります。
Clever-ism(クレバーイズム)
知性・理解力を使って感情を避ける
「それは幼少期の愛着の問題で…」
「脳の仕組み的には…」
理解はできているのに、
「感じる」ことには踏み込まない。
身体の反応
-
体が滑らかに動かない
-
呼吸が浅い
-
頭だけが忙しい
典型なのは
涙が出る直前に“賢い語り”が始まること。
Strong-ism(ストロングイズム)
強さの仮面で弱さを否認する
「泣いても意味ない」
「私は大丈夫」
「弱音は吐きたくない」
強くあろうとすると、
弱さ・痛み・脆さと接触できない。
身体の反応
-
胸郭が固い
-
下腹部が緊張
-
喉が閉じる
典型
涙が出る直前に体が固まり「平気です」と言う。
Holy-ism(ホーリーイズム)
“愛”“許し”“スピリチュアリティ”で痛みを避ける
「愛で包めば癒される」
「許すことが大事です」
「高い意識を保ちたい」
精神性の言葉で、
生の怒り・悲しみから離れるパターンです。
身体の反応
-
頭頂が軽い
-
体幹が空虚(浮ついている)
-
感情の波が起きない
典型的なのは
怒りを感じる前に“愛”の話をし始める事が多いです。
Hope-ism(ホープイズム)
未来への期待で“今”の痛みを感じない
「いつか良くなると思う」
「来月こそ変われる」
「もう少し頑張れば」
現実に触れず、未来へ逃避するパターン。
身体の反応
-
足が地につかない
-
体感が薄い
-
呼吸が上へ浮く
典型
今感じている苦しさを言わず、未来の計画を語り続ける。
共通点:イズムとは“今ここからの離脱”
どのイズムも方向は違いますが、
根っこはひとつです。
“いま、この瞬間の体験(is)から離れる”こと。
これがイズムの本質です。
胸の奥が動きだすその時、
心は防衛として“横に逸れる”のです。
だからこそ「今ここ」に在るのは簡単ではありません。
では、どうすれば“今ここ”に戻れるのか?
イズムを消す必要はありません。
そもそも消す事など出来ないでしょう。
それは自我が身を守る自然な反応だからです。
大切なのは、
「あ、いま逃げたな、逸れたな」 と気づくこと。
そして、今この瞬間の身体へ戻ること。
▫️胸は?
▫️呼吸は?
▫️喉の奥は?
▫️肩は上がってないか?
▫️足の裏は地面を感じているか?
“説明” ではなく、
生の体験 に戻る問いかけです。
それだけで、
今ここへの道が再び開きます。
まとめ
私たちが「今ここ」にいられないのは、
意志や努力の問題ではなく、
心が無意識に発動させる 逃避のパターン(イズム) が働くからなのです。
僕がセラピーのプロセスは、
「キツイこともあるよ」
「多分僕の事が嫌いになる時期もあるよww」
などと伝えるのは、タイミングがくると
この「ism」への気づきを促すからです。
このismへの気づきが深まると人生を根底から
大きく変容させる
とても力強いものになるのです。
ナランホの洞察は、
この“逃避の構造”を理解するための強力な指標になります。
気づけた瞬間、
人はまた “いま、この瞬間” へ戻って来ることができます。
この気づきこそが、変化の入り口になるのです。
salon sonomamaでは、身体心理療法・ゲシュタルト療法をベースに、安心の場で身体や感情を扱うセッションを行っています。
完全予約制で、対面以外にもオンラインにも対応しております。
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