なぜ『今ここ』にいられないのか? 心がつくる“逃避のパターン”

2025.12.29

私たちが「今ここ」にいられなくなる理由には、
心理的メカニズムがあります。

その理解に大いに役に立つのが、
クラウディオ・ナランホ という心理療法家です。
ゲシュタルト療法の第二世代であり、
さらに 現代エニアグラムの体系化を主導した人物でもあります。

エニアグラムの各タイプに共通する「無意識の逃避構造」を深く洞察したナランホは、人が本音や感情に触れようとする瞬間に働く
自我の“逃避=防衛”のパターン 
○○ism(イズム) という形で整理しました。

この視点を持つと、
「なぜ今ここにいられないのか?」が
単なる気の持ちようではなく、
心の自然な反応として理解できる ようになります。


ゲシュタルト療法は「今ここ」の気づきの療法

ゲシュタルト療法の中心にあるのは、
今ここで起きている体験に気づくこと”です。

▫️呼吸の深さ
▫️胸の動き
▫️身体のこわばり
▫️浮かびあがる感情
▫️言葉にならない衝動

こうした“生の体験”へとつながった瞬間こそ、
人は自然に変化と癒しを経験します。

しかし実際には、
体験が動きそうになるその直前で、
心がスッと横へ逃げてしまうことがあると思います。

これが、ナランホが整理した 逃避のイズム(防衛) です。


心がつくる“逃避のパターン(イズム)”とは?

イズムとは、
いま起きている体験(is ism)から離れるための心の習慣=防衛 のことです。

怒りが込み上げる前に、
悲しみが触れそうになる前に、
胸がうずく前に、
喉が震えそうになる前に

心は「感じたくないもの」から身を守ろうとして、
別のルートへ意識をそらします。

これが「今ここにいられない」という現象のメカニズムです。


代表的な“逃避のイズム”

ここからは、実際のセッションで最も多く現れる
7つの逃避パターン(イズム) 
もう少し深く・具体的に解説してみます。


About-ism(アバウトイズム)

説明・分析の世界に逃げる

「母との関係が〜で…」
「これはトラウマで、きっと〜」
「たぶん私はこういう性格だから」

「〜について語る(about it)」ことで、
いま湧いている体験から離れてしまうパターンです。

身体の反応

  • 胸の動きが止まる

  • 呼吸が浅い

  • 感情が動いていない

セッションでの典型は
涙の手前で突然“説明モード”になる。


Should-ism(シュッドイズム)

「〜すべき」「〜ねば」に飲み込まれる

「もっと頑張らないと」
「怒ってはいけない」
「いい母でいなきゃ」

理想・道徳・正しさによって自己を縛りつけ、
本音に触れない防衛です。

身体の反応

  • 胸が硬い

  • 呼吸が上部に引きこもる

  • 背すじが過緊張

よく起こる心理
怒りが外へ出ず、自己攻撃(反転)へ向かう事が最も多く見られます。


Nice-ism(ナイスイズム)

“いい人”を演じて怒りや本音を隠す

「全然大丈夫です」
「気にしてないです」
「相手には悪気はないので…」

優しさの仮面で、本音と接触しないパターンです。

身体の反応

  • 肩・背中が硬い

  • 胸は凍結

  • 声が軽く響かない

典型的な場面としては
怒りに触れそうになると笑ってごまかすことが多くなります。


Clever-ism(クレバーイズム)

知性・理解力を使って感情を避ける

「それは幼少期の愛着の問題で…」
「脳の仕組み的には…」

理解はできているのに、
「感じる」ことには踏み込まない。

身体の反応

  • 体が滑らかに動かない

  • 呼吸が浅い

  • 頭だけが忙しい

典型なのは
涙が出る直前に“賢い語り”が始まること。


Strong-ism(ストロングイズム)

強さの仮面で弱さを否認する

「泣いても意味ない」
「私は大丈夫」
「弱音は吐きたくない」

強くあろうとすると、
弱さ・痛み・脆さと接触できない。

身体の反応

  • 胸郭が固い

  • 下腹部が緊張

  • 喉が閉じる

典型
涙が出る直前に体が固まり「平気です」と言う。


Holy-ism(ホーリーイズム)

“愛”“許し”“スピリチュアリティ”で痛みを避ける

「愛で包めば癒される」
「許すことが大事です」
「高い意識を保ちたい」

精神性の言葉で、
生の怒り・悲しみから離れるパターンです。

身体の反応

  • 頭頂が軽い

  • 体幹が空虚(浮ついている)

  • 感情の波が起きない

典型的なのは
怒りを感じる前に“愛”の話をし始める事が多いです。


Hope-ism(ホープイズム)

未来への期待で“今”の痛みを感じない

「いつか良くなると思う」
「来月こそ変われる」
「もう少し頑張れば」

現実に触れず、未来へ逃避するパターン。

身体の反応

  • 足が地につかない

  • 体感が薄い

  • 呼吸が上へ浮く

典型
今感じている苦しさを言わず、未来の計画を語り続ける。


共通点:イズムとは“今ここからの離脱”

どのイズムも方向は違いますが、
根っこはひとつです。

“いま、この瞬間の体験(is)から離れる”こと。

これがイズムの本質です。

胸の奥が動きだすその時、
心は防衛として“横に逸れる”のです。

だからこそ「今ここ」に在るのは簡単ではありません。


では、どうすれば“今ここ”に戻れるのか?

イズムを消す必要はありません。
そもそも消す事など出来ないでしょう。
それは自我が身を守る自然な反応だからです。

大切なのは、
「あ、いま逃げたな、逸れたな」 と気づくこと。

そして、今この瞬間の身体へ戻ること。

▫️胸は?
▫️呼吸は?
▫️喉の奥は?
▫️肩は上がってないか?
▫️足の裏は地面を感じているか?

“説明” ではなく、
生の体験 に戻る問いかけです。

それだけで、
今ここへの道が再び開きます。


まとめ

私たちが「今ここ」にいられないのは、
意志や努力の問題ではなく、
心が無意識に発動させる 逃避のパターン(イズム) が働くからなのです。

僕がセラピーのプロセスは、

「キツイこともあるよ」
「多分僕の事が嫌いになる時期もあるよww」

などと伝えるのは、タイミングがくると
この「ism」への気づきを促すからです。

このismへの気づきが深まると人生を根底から
大きく変容させる
とても力強いものになるのです。

ナランホの洞察は、
この“逃避の構造”を理解するための強力な指標になります。

気づけた瞬間、
人はまた “いま、この瞬間” へ戻って来ることができます。

この気づきこそが、変化の入り口になるのです。

salon sonomamaでは、身体心理療法・ゲシュタルト療法をベースに、安心の場で身体や感情を扱うセッションを行っています。

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