
動き続ける人は多いものです。
仕事が終わっても、じっとしていられない。
休日なのに予定を入れてしまう。
「今日はゆっくりしよう。」
と言いながらスマホを開いては何かを調べ続ける。
疲れているはずなのに、止まれない。
多くの人は、
「私は昔からこういう性格だから。」
そう考えます。
その通りです。
これは性格です。
ただ、多くの人が見落としていることもあります。
性格は、頭の中だけにつくられるものではありません。
姿勢。
呼吸。
筋肉の緊張。
身体の使い方。
性格は、身体にも刻まれている。
そんな視点をお伝えします。
身体は、生き延びる方法を覚える
子どもは、生まれた瞬間から環境へ適応します。
安心できる環境なら、その安心を身体で覚えます。
反対に、安心よりも緊張の多い環境では、その環境を生き抜くための身体になっていきます。
期待に応える。
空気を読む。
我慢する。
弱さを見せない。
頑張る。
もちろん、これが悪いことなのではなく、
そのときは、それが必要だったからです。
そして、こうした適応は、考え方だけでは終わりません。
呼吸が変わる。
姿勢が変わる。
筋肉の使い方が変わる。
身体は、「この生き方が最も安全だ」と学習しながら成長します。
だから、大人になっても休めない状態が生まれてきます。
頭では休みたいと思っていても、身体が動き続けようとするのです。
そして、その記憶は、
頭で思い出せる記憶ではありません。
養育書との関係は
セラピーをしていると、必ずと言っていいほど触れるテーマです。
それでも多くの方は、
「親との関係に問題はありませんでした。」
「特に嫌な記憶はありません。」
と言います。
もちろん、それが事実である人もいます。
しかし、ボディサイコセラピーが見ているのは、出来事の記憶ではありません。
身体が、どのように環境へ適応したのか。
そのパターンです。
ボディサイコセラピーでは、性格の土台は、胎児期から3歳頃までの
「言葉になる前の体験」の中で形づくられると考えます。
もちろん、その後も人は成長し、さまざまな体験を通して人格は発達していきます。
しかし、生き延びるために身につけた身体と心のパターンは、その土台として残り続けます。
覚えていないのは自然なことです。
それでも身体は覚えています。
どんな呼吸をしていたのか。
どこに力を入れていたのか。
何を我慢し、どうやって自分を守ってきたのか。
その積み重ねが、姿勢や呼吸、筋肉の緊張となり、今の性格の土台になっています。
実は、私自身も最初はこの考えを受け入れることができませんでした。
かつては、認知や自我を中心に扱うセラピーを学び、実践していました。
だから、「性格の土台は言葉になる前につくられる」という考えは、とても衝撃的でした。
しかし、ボディワークを学び、自分自身の身体を通して体験し、多くのクライアントの変化に立ち会う中で、頭だけでは説明できない現象を何度も目にしました。
特に乳幼児期を連想させる、身体的な記憶が多く、
ほとんどワークの中で無意識的に立ち上がります。
その体験の積み重ねが、この考えを受け入れざるを得ないものにしていったのです。
「止まると不安になる」にも理由がある
例えば
-
止まると不安になる。
-
価値のない自分になるのが怖い。
-
休んでいると罪悪感が出てくる。
一見すると別々の悩みに見えます。
しかし、あるボディサイコセラピーの流派では、
幼少期に環境へ適応する中で形成された身体と心のパターンを
「性格構造」と呼んでいます。
これは人を分類するためのものではありません。
「自分は、どんな方法で生き延びてきたのか。」
その身体の歴史を理解するための、一つの地図です。
今回は、その中でも「止まると不安になる人」に
多く見られる三つの性格パターンをご紹介します。
代償性オーラル構造
「止まると不安になる。」
止まると、寂しさや空虚感、不足感に触れてしまいます。
だから動きます。
予定を入れます。
仕事をします。
誰かのために動き続けます。
身体的には、エネルギーが少なく、呼吸が浅く、足腰の弱さが見られることがあります。
幼少期に十分な支えを感じられず、「一人で頑張る」ことを覚えた適応です。
ナルシシズム構造
「価値のない自分になるのが怖い。」
成果を出す。
期待に応える。
役割を果たす。
そうすることで、自分の価値を感じようとします。
身体は自然と前へ前へと進もうとします。
胸や肩に力が入りやすく、足が弱く上半身で踏ん張る姿勢が特徴です。
幼少期には、「認められること」や「期待に応えること」が安心につながっていた人によく見られます。
硬直構造
「休んでいると罪悪感が出てくる。」
「ちゃんとしていなければならない。」
そんな感覚を身体の奥に抱えています。
責任感が強く、人から期待されることも多いでしょう。
身体全体がまとまり、一見すると安定して見えますが、慢性的な緊張を抱えています。
力を抜くことよりも、頑張っている方が安心できる身体です。
幼少期には、自分の感情を抑え、「良い子」でいることで関係を保ってきた人にもよく見られます。
もちろん、人は一つの構造だけでできているわけではありません。
複数の特徴が重なり合っているため心理的、身体的にも複雑な構造になっています。
大切なのは、自分を型にはめることではありません。
自分の身体が、どんな生き方を覚えてきたのか。
そこに気づくことが、変化の第一歩になります。
身体から変えていく
「もっと休みましょう。」
そう言葉で言われても、言葉以前の適応(身体)は変わりません。
止まると不安になる人ほど、意識は外へ向いています。
仕事。
家族。
周りの期待。
次にやること。
だから最初に必要なのは、自分の身体へ意識を戻すことです。
足裏は床を踏めているだろうか。
呼吸はどこまで入っているだろうか。
肩や顎に力が入り続けていないだろうか。
重心はどこにあるだろうか。
身体は嘘をつきません。
身体に気づくこと。
身体を感じること。
外へ向き続けていた意識を、内側へ戻していくこと。
そこから変化は始まります。
身体は、過去を覚えています。
だからこそ、身体は未来も変えることができます。
ボディサイコセラピーは、考え方を変えるためのものではありません。
幼い頃、生き延びるために身につけた身体と心のパターンに気づき、
その身体に新しい体験を積み重ねていくアプローチと言えます。
性格は、変えるものではありません。
身体から自由を取り戻した結果として、少しずつ変わっていくものなのです。

